十勝毎日新聞     昭和46年(1971年)8月19日の記事
駅前にカニ族の宿

地区労などの善意で誕生

 帯広駅前にカニ族ハウスが誕生、店開きした。これは帯広地区労(吉田勇治議長)と帯広市、帯広駅、それに市民の善意でつくられたもの。最低の費用で道内旅行を楽しむカニ族たちから珍しい試みとして歓迎され、連日十人ほどの女性のカニたちでにぎわっている。

 設置を提案したのは帯広地区労「労働運動は組合活動だけではない。社会福祉活動通じて住民にとけ込むことも必要。帯広駅前通路に学生たちがごろごろ寝ころんでいるのは、美観上も好ましいことではないし、前途ある学生たちの姿としてはわびしい、こうした旅行者の便宜を考えてあげよう」と、カニ族のための簡易宿泊所を作るよう帯広市と帯広駅に働きかけた。

 帯広市高橋市民部長も「大変良いこと。市長のいう市民党的立場も考え、また帯広の学生や勤労青少年たちが旅行して他の土地で世話になっていることも考えて賛同した」というが、急な思いつきで予算はゼロ。そこで市内西一南九、有限会社、山根テント=山根永蔵社長=に「一万円ぐらいの予算で簡易ガレージ式のものでも・・・・・・」と相談した。

 山根さんは「帯広市がそんな不恰好なものでは、私が寄付しましょう」とこころよく引きうけ、パイプ式の三十人収容の幕舎一張を寄贈した。中には二畳と六畳のタタメ敷きがあり、定員は十六人。定員が少ないために目下のところは”女性優先”。

 帯広駅はいまが観光シーズンのピーク、駅前にゴロ寝するカニ族はこのところ毎晩百二、三十人もおり、それだけにこのテントの利用も多く、早くも若い女性のカニの利用でにぎわっている。このテントは八月末まで設置することにしており、関係者は「全道でもこのような施設ができれば安心して旅行もできる」と今後も続けていく方針だが、国鉄側では「管理上の問題がある」と迷惑顔だが、旅をPRしている国鉄としても、これぐらいの協力は当然。もっと積極的な姿勢で応援して欲しい-と関係者は言っている。

 

 

 

十勝毎日新聞     昭和46年(1971年)9月24日の記事
40日間で約三百人 利用

帯広 カニ族用宿泊テント

 帯広を訪れた“カニ族”に寝場所を−と、八月十日から四十日間開設されていた宿泊テントの撤去作業が、このほど行われた。

 例年夏休み時期に訪れる多数の若い旅行者のほとんどはカニ族。帯広駅前で寝袋にくるまって眠る若者たちに、宿泊場所を−と帯広地区労(吉田勇治議長)が提案、帯広市、帯広駅、山根テントの協力を得て設置したもの。

 テント利用者は、四十日間で約三百人(推定)。このうち百六十一人が、宿泊ノートに住所、氏名、感想を記入しており、いずれもこのテントの設置を喜んでいる。中には、三人グループで五日間泊った若者たちもおりこのテント、カニ族の間ではかなり好評だったよう。

 敷地を提供した帯広駅では、本年度限りで来年度は敷地を提供しない考えだが、地区労は、来年はシーズン初めの七月からテントも二つに増やして、場所を変えて設置したい−と言っている。