十勝日報     昭和46年(1971年)8月18日の記事
 
駅前に善意のテント  吉田地区労議長が奔走

カニ族が感謝

 帯広を訪れた”カニ族”が駅前のアスファルトの上で寝袋に入って寝ているのを
みかね帯広地区労議長の吉田勇治さん(三二)が、関係方面に働きかけ、駅前交番
裏にテントの”無料簡易宿泊所”をつくった。道内の観光地でもこのようなテントは
珍しく、一泊した女性カニ族は「暖かい心づかいを受け、帯広は青春の思い出の
地として一生忘れないでしょう」と感謝していた。

 リュックを背負ったカニ族は、旅費を節約するため駅の待合室や屋外で
ゴロゴロ。どこの観光地でもみかける風景だが、帯広駅は午前零時から三時まで
待合室の清掃などのため旅行者に外に出てもらう。このため早朝の一番列車を
待つ”カニ族”たちは駅舎の屋根が張り出した下のアスファルト上に新聞紙を敷き、
寝袋にはいって、仮眠している。

 これをみかねた吉田さんは、学生たちがかわいそうだし、都市の美観上や
防犯上からも好ましくない、と市に働きかけた。その結果、市内西一南九の
山根テントが市に寄贈したテントを駅前交番うらに張る事ができた。

 テント内にワクを組み、タタミ十枚を敷いてレザーを張り、二〇人ていど泊れる
”簡易宿泊施設”ができた。収容能力に限度があるため女性にのみ開放されているが
吉田さんの心づかいは各方面から感謝されている。この善意のテントは九月末まで
設けられる。