十勝民報     昭和52年(1977年)6月15日の記事
   
カニの家、今年も開設    25日から3ヶ月間

 夏の観光シーズン中、北国帯広を訪れるカニ族にすっかりお馴染みになっている
カニの家が、ことしも六月二十五日から開設される事になった。

 カニの家が開設されるのは、国鉄帯広駅構内の空地、昭和四十六年から
設けられているもので、毎年多くのカニ族が利用している。

 カニの家が設けられる前、帯広駅に降りたカニ族らは、付近の軒下や駅構内に
ゴロ寝するなどして風紀上、好ましくない面があった。そこで地区労が、7年前の
四十六年、帯広駅の構内の一角に帯広市のタイアップを受けて、テントを使った
カニの家をオープンさせた。最近では、カニの家の利用者のなかで自然と規律や
マナーが芽生えるなどして大きなトラブルもなく、設置している帯広地区労なども
「ことしもどうぞ・・・」と二十五日から九月二十四日までの三ヶ月間、
開設することにしたもの。

 

十勝日報     昭和52年(1977年)6月26日の記事
 
今年もカニの家設置    

帯広駅横 早くも"入居"申し込み

 

 夏の旅行シーズン中、若者で賑わい、全国的に名を知られるようになった
"カニの家"が二十五日、帯広駅横に建てられた。昨年同様テント張りニ棟。
早くも"入居"を申込むカニ族がいるなど、仮の宿は今年も賑わいを見せそうだ。

 カニの家が建てられたのは六年前。帯広地区労など地元有志が、観光に
訪れては駅前の道路で寝袋にくるまっているカニ族を見て「底冷えのする帯広、
寒いろう」と駅横の市有地にテント小屋を建てた。最初は一棟で、木の土台を横に
並べその上に畳を敷き、パイプで小屋を組んだ簡単なもの。
しかしこの手軽さ、宿泊無料は気取らない旅を好む若者にたちまち人気。
昨年も三千人が利用し口コミで全国の旅行マニアにも知られるようになった。

 二十五日は朝九時半から地区労関係者が出て小屋作り。
カナヅチを手に組み上げ、作業は一時間半ほどで終わったが、入居を申込む若者が
さっそく登場。一夜の宿にありつけて、まず、安心といった表情。
またこのカニの家愛好者も数多く、どこへ行かなくても帯広だけはと仲間意識も
育っているようだ。

 

十勝民報     昭和52年(1977年)7月13日の記事
   
にぎわうカニの家     旅の思い出ふえました

 今年で七年目を迎えた"カニの家"。今年も去る六月二十五日に開設となったが
当日さっそく利用者が現れるなどヤングを中心とする旅行者にモテているようだ。

 このカニの家は、帯広地区労が中心になって四十六年に開設したもの。
開設前はヤングの旅行者が駅前にゴロ寝を決め込んだり、といったことで風紀上
どうも好ましくなかったが、この解決にと駅前の一角にテントを張り利用してもらおうと
スタートさせたもの。

 利用者は十八才から二十五歳までの学生が大半。今年七月十日現在の利用者は
宿泊人名簿に名を連ねているだけで四十五人ほどだが、いずれも「これで楽しい
想い出がひとつ増えました」とカニの家を後にしている。

 またカニの家には、この宿泊人名簿のほか「旅のつれづれから」というノートが
置かれており、宿泊者が自由に記載できるシステムになっている。このノートから
利用者の声をひろうと−。

「ほんとにうれしい。カニの家第一号。タダで泊れるなんて皆、兄弟。
北海道の自然を大切に」 (無署名)

「カニの家、おばさんが一人だけ。なんかとってもコワイ。
でも、とっても話好きのおばさん。旅っていいね。
いろんな人に出会い、いろんな出来事に出会う」 (何も知らないケメ)

「帯広の人って心がやさしいんだなあ。
こんな無料宿泊所をぼくらに提供してくれるなんて
とても役に立ったよ。帰ったら教えてあげよう」 
(オートバイ野郎、CHO・OTA、22歳、学生)

「私こと中村陽介は九州の佐賀県から約1年ぐらいかけて
日本を旅する二十六歳です。アルバイトしながら、のんびり
旅してます。カニの家のような宿泊所はとっても貴重な存在です。
「秋田君と二人で北海道にチョウを求めて来ました。
これから一ヶ月生きていられるか?」
(藤田武史、19才、京都出身、信州大理学部)

 

十勝日報     昭和52年(1977年)7月31日の記事
 
若者の夏"カニの家"満員    

旅姿に新しい流れ バックパック背にエビ族

 夏休みに入り、レジャーも本格化。帯広駅前「カニの家」もこの二十日過ぎから
満員の活況を見せてきた。今年は従来のカニ族からたて長のバックパックを背負った
"エビ族"が多いよう。若者の旅姿にも新しい流れが入ってきている。

 カニの家は六月二十五日にオープン。オープン当初はまだ肌寒く大学生などの
休み前とあって、訪れる若者も少なかったが、暑さが本格化してきた二十日過ぎからは
急に増えだし、定員二十五人のテントニ張りが満員の混み様。夜汽車で着いた
若者が訪れると、先着組みが身をずらしてなんとか"空地"づくり。そんな風景が
見られるようになった。北海道を訪れる若者の代名詞"カニ族"が従来は多く、
キスリングなどに食料、寝袋などをつめ込み、横ざまに歩いていたが、ここ数年は
パイプに袋をつけたたて長のバックパックを背負った"エビ族"が台頭。
カニからエビへと変わりつつある。どうやらこのバックパックの方が荷運びが
楽なのが増えた原因のようで、服装も心なしかスッキリ。エビ族の特徴のようだ。

 しかしテントではエビもカニも一緒。旅談義に花を咲かせては、夜十一時の
消灯まで、若者の話し声がたえない。旅行雑誌にも大きく取り扱われるように
なったこのカニの家。今夏も気楽な仮の宿として人気を集めている。